月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「カーリン、ただいま」

 言い終える前に、彼女は勢いよく抱きついてきた。
 強く抱きしめ返すと、カーリンの肩が震えているのが伝わってくる。

 「ご無事で……よかった、本当に……っ」

 泣きじゃくる声に胸が熱くなる。
 エミリアに背中を撫でられ、くしゃくしゃになっていたカーリンの表情がふと固まる。
 朝日を浴びたレオナールが、ゆっくりと馬車から降りてきたのだ。

 「……あれ? 殿下……?」

 カーリンはエミリアから離れ、両手で口を覆った。
 彼女の視線の先で、レオナールはほんの少し困ったように、しかしどこか照れくさげに微笑んでいた。
 白髪でもなければ、杖も持っていない。朝の光を受けても姿は変わっていない。
 そんなレオナールを目のあたりにし、カーリンの目がみるみるうちに大きくなっていく。

 「えっ、どういうことですか!?」

 勢いよく声を上げたカーリンに、エミリアは目を細めた。
 彼女の驚きは当然だ。ついこの間までレオナールは深い呪いに囚われ、夜明けとともに老いた姿へ戻っていたのだから。
 そこへ、セルジュもゆっくりと近づいてきた。
 控えめな足取りながら、その瞳はレオナールをしっかりと見据えている。

 「……殿下。これは……まさか、本当に?」
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