月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 彼は信じたいのに信じきれない、そんな揺れる声で問いかけた。

 「セルジュ、カーリン。落ち着いて聞いてほしいの」

 エミリアがそう言うと、ふたりは同時にこちらへ顔を向けた。

 「王都であの呪いを生み出した元となる術式が、完全に断たれたの。それと同時に、レオナール様にかけられていた呪いも……消えたわ」
 「呪いが、完全に?」

 カーリンが声を震わせる。

 「ええ。もう、夜明けが来ても姿は変わらない」

 そう答えると、レオナール様がそっと隣に立ち、淡く微笑んだ。

 「信じがたいだろうが事実だ。これからは、昼であれ夜であれ、同じ姿で皆の前に立てる」

 その声音には、長い年月を越えた人だけが持つ、静かな解放の響きがあった。
 セルジュは口元を押さえ、目を見開いたまま固まっていたが、深く息を吐いて膝をつき、頭を垂れた。

 「殿下……本当におめでとうございます! この日をどれほど待ち望んでいたことか……!」

 その声は震え、石畳に落ちる涙が朝日にきらめく。

 「セルジュ、立ってくれ。お前に泣かれると私のほうが困る」
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