月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「私ひとりの力じゃありませんから」

 理不尽な恨みを弟であるレオナールに募らせていたにせよ、ルーベンが身を挺したからでもある。
 弟に呪いをかけたという、決して許されない罪。しかし同時に、最後の瞬間レオナールを守ろうとしたのも、あの人だった。
 たとえすべてを償えるわけではなくても、ルーベンはたしかに弟を救おうとした。彼もまた、あの瞬間ようやく赦される道を選んだのだ。
 ルーベンの影はまだ胸に痛い。それでも彼は最後に兄としての姿を取り戻していたと思わずにはいられなかった。
 静寂が流れたあと、セルジュがぱっと顔を上げた。

 「それでは! 今夜はお祝いをいたしましょう!」

 声には久しぶりに明るい張りがあった。
 カーリンが目を丸くし、次の瞬間、弾けるように笑顔になる。

 「お祝い! それ、すごく素敵! じゃあ、すぐに準備をはじめなくちゃ!」

 スカートをふわりと翻し、もう走り出しそうな勢いだ。

 「カーリン、落ち着いて。まだ朝よ」
 「朝だからこそはじめないと間に合いません! 殿下が呪いから解放された初めての夜なんですもの! 最高の食卓をご用意しますから!!」

 セルジュもすでに段取りを考えているらしく、真剣な顔でうなずいた。
< 198 / 224 >

この作品をシェア

pagetop