月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 彼が現れた瞬間、シルバは〝王だ!〟と言わんばかりに尻尾をぶんぶん振り、全速力で突撃した。

 「うわっ、シルバ、落ち着け! 書類が――!」

 抱きつくようにじゃれつかれ、レオナールはぐらりと体勢を崩す。しかし顔には笑みが浮かんでいた。

 「王宮に来てからというもの、シルバは元気が有り余っているようだな」
 「それはもう、陛下がいらっしゃるたびに、毎回全力で歓迎しておりますからな」

 芝の端から、セルジュが困ったような、しかしどこか誇らしげな表情で歩み寄ってくる。

 「シルバにとって、陛下はご主人にして遊び相手。お姿を見れば、抑えきれぬ喜びが噴き出すのでしょう」
 「いや、噴き出しすぎだろう」

 レオナールは書類を片手に、白銀の獣に全体重で押し倒されそうになりながら、内心おかしさを隠せない。
 エミリアは思わずくすりと笑ってしまった。

 「シルバ、王様を倒すなんて不敬罪になっちゃうわよ?」
 「くぅんっ!」

 それでもシルバはお構いなしに尻尾を振り回し、レオナールのマントを引っ張って離さない。
 セルジュは静かに咳払いをし、少しだけ声を潜めた。
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