月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「陛下。そろそろ午後の審議のお時間が迫っております。できれば、書類に牙の跡がつく前に」
 「本当に、臣下の言葉とは思えぬ警告だな」

 レオナールはついに苦笑し、シルバの首元をぽんぽんと叩く。

 「ほら、ひとまず離れてくれ。あとで散歩に付き合う。ちゃんと約束するから」

 その言葉に、シルバは〝ほんとう?〟と言わんばかりに首をかしげ、次の瞬間、ふわり舞って小型化してエミリアの腕に飛び乗った。

 「きゃっ!」

 思わず抱きとめたエミリアの胸元で、シルバは得意げに「くふん」と鼻を鳴らす。

 「エミリア様同様、陛下のお言葉もちゃんと聞くのね」
 「聖獣である以上、忠誠心は高いのでしょうな。ただ、テンションが制御できないだけで」

 カーリンの言葉を受けたセルジュの真顔の発言に、場の全員が微妙に納得してしまう。
 そしてレオナールは、ようやく整った服と書類を直しながら、エミリアに向き直った。

 「……というわけで。医療協定の件、後ほどふたりで話し合おう。昼過ぎなら時間が取れる」
 「ええ、楽しみにしています」

 エミリアが微笑むと、レオナールの表情がやわらかくほどける。
< 223 / 224 >

この作品をシェア

pagetop