月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「では、あなたは今日からシルバね」

 エミリアの言葉に応えるかのように、シルバがくぅんと鼻を鳴らす。
 レオナールは口元を綻ばせ、もう一度シルバを撫でた。

 「それから……」

 躊躇うように言葉を止め、レオナールがその先を続ける。

 「私も名前で呼んでくれてかまわない」
 「……はい?」
 「その……殿下ではなく、レオナールと」

 どことなく照れが滲む声色だったため、エミリアまでなんだかくすぐったい。

 「はい。ではレオナール様とお呼びしますね」

 レオナールが目を細くする。それは長く閉ざされていた冬の扉が、ほんの少し開かれたような微笑だった。
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