月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません

 その日の夕刻、エミリアはレオナールにそのことを話した。
 レオナールはしばらく黙って聞いていたが、やがてゆるく目を細めた。

 「……それは、よい考えだ」
 「いいのですか?」
 「もしかしたら聖獣たちはエミリアの聖なる力を感じ取って、この谷に集まってきているのかもしれない」
 「私の、力……」
 「そうだ。エミリアの祈りは、この谷の結界を強めている。聖獣たちも、それを本能で感じ取っているのだろう」

 レオナールの声は低く穏やかだった。

 「治療院を開こう」
 「はい」

 エミリアはうれしさいっぱいに大きくうなずいた。

 翌日、エミリアとカーリンが並び、城の庭に木の看板を立てた。
 そこには、美しい筆致でこう書かれている。

 【聖獣の癒しの家】

 「だけど、聖獣たちに文字が読めるかしら」
 「読めなくても大丈夫です。エミリア様の癒しの力を嗅ぎ取るでしょうから」
 「ふふ、そうね」

 現にこの数日のうちにたくさんの聖獣が訪れている。
 風に揺れるその板の前で、シルバが誇らしげに尻尾を振った。
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