月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
微笑んでいても、その表情の奥には静かな憂いがあった。
しかし聖女の役目は〝愛されること〟ではなく〝支えること〟。彼の心をいつか癒せれば、それでいい。今度は、そう自分に言い聞かせた。
だが王太子妃としての日々は、想像以上に孤独だった。
王宮に迎えられてから三ヶ月が過ぎた冬の夜、エミリアは寝室の窓辺にひとり座ってぼんやりしていた。窓の外は雪。庭の白百合はすでに枯れ、代わりに氷の結晶が枝に咲いている。
部屋は美しく整えられており、絹のカーテンに銀糸の刺繍が施された寝具、暖炉には香木が焚かれている。一見すると温かな空間だが、そのすべてがエミリアにとっては借り物のようだった。
昼間は王都にある結界が祭られた祭壇で祈りを捧げ、儀礼の準備や神殿との連絡役として忙しく過ごすが、夜になると急に静けさが押し寄せてくる。侍女たちは丁寧に仕えてくれるが、心に触れようとする者は少ない。
ルーベンとは式典や公式の場で言葉を交わすことはあっても、私的な会話はほとんどなかった。彼が口にするのは公務に必要な言葉だけ。夜の晩餐では、互いの椅子の間に見えない壁が居座っていた。
彼はいつも完璧な微笑を浮かべていたが、その瞳は遠く、自分の存在は背景の一部であるかのようだった。
ある夜、エミリアが書斎の前を通りかかると、扉の隙間から女性の名を呼ぶ彼の声が聞こえてきた。優しくて切ないが、エミリアの名ではない。
その瞬間、胸に凍えた風が吹き荒れる。寝室に戻ったエミリアは、祈りの言葉を口にした。
「神よ、殿下の心に安らぎをお与えください。私の手は届かなくとも、どうか殿下を癒してください」
しかし聖女の役目は〝愛されること〟ではなく〝支えること〟。彼の心をいつか癒せれば、それでいい。今度は、そう自分に言い聞かせた。
だが王太子妃としての日々は、想像以上に孤独だった。
王宮に迎えられてから三ヶ月が過ぎた冬の夜、エミリアは寝室の窓辺にひとり座ってぼんやりしていた。窓の外は雪。庭の白百合はすでに枯れ、代わりに氷の結晶が枝に咲いている。
部屋は美しく整えられており、絹のカーテンに銀糸の刺繍が施された寝具、暖炉には香木が焚かれている。一見すると温かな空間だが、そのすべてがエミリアにとっては借り物のようだった。
昼間は王都にある結界が祭られた祭壇で祈りを捧げ、儀礼の準備や神殿との連絡役として忙しく過ごすが、夜になると急に静けさが押し寄せてくる。侍女たちは丁寧に仕えてくれるが、心に触れようとする者は少ない。
ルーベンとは式典や公式の場で言葉を交わすことはあっても、私的な会話はほとんどなかった。彼が口にするのは公務に必要な言葉だけ。夜の晩餐では、互いの椅子の間に見えない壁が居座っていた。
彼はいつも完璧な微笑を浮かべていたが、その瞳は遠く、自分の存在は背景の一部であるかのようだった。
ある夜、エミリアが書斎の前を通りかかると、扉の隙間から女性の名を呼ぶ彼の声が聞こえてきた。優しくて切ないが、エミリアの名ではない。
その瞬間、胸に凍えた風が吹き荒れる。寝室に戻ったエミリアは、祈りの言葉を口にした。
「神よ、殿下の心に安らぎをお与えください。私の手は届かなくとも、どうか殿下を癒してください」