月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「民はそういう見せ物を好むからな」
 「ええ。けれど、それでこそ〝秩序〟でしょう?」

 バネッサの指がルーベンの頬をなぞる。

 「あなたがあの女の幻に囚われる必要は、もうないのですわ」

 ルーベンはその手を払いもせず、ただ静かに視線を伏せた。

 「そうだ、弟君も呼んだらどうです?」
 「……レオナールを? だが、あいつは」
 「呪われた身、なのですよね? 余興にはもってこいだと思いません? 祝宴は夜にして、呪いで異形にされた姿をみんなの前に……ふふふ。でも、そんな姿を晒すために来るかしら。怖くて来られないかもしれないわね」
 「……好きにしろ」

 疲労とも諦念ともつかぬ響きがあるのを自分でも感じる。

 「ええ、陛下。必ず、完璧な夜にいたします」

 バネッサは優雅に一礼し、唇に笑みを浮かべた。
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