月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 レオナールは呼吸を整え、低く呟いた。

 「我が剣に宿れ――氷鎖の紋」

 足元から氷の紋が広がり、魔獣の脚を絡め取る。動きを封じた瞬間、炎の魔術を重ねて叩きつけた。
 土が焼け、光と闇が交錯する。獣たちの咆哮が消えたとき、森は再び静まり返っていた。
 剣先から滴る血を振り払い、息を吐く。
 夜の闇はまだ深く、朝は遠い。
 城へ戻ると、暖炉の灯が小さく揺れていた。
 エミリアが起きて待っていたのだ。傍らにはシルバもいる。
 彼女はレオナールの姿を見て、安堵と憂いの入り混じった微笑を浮かべた。

 「おかえりなさい、レオナール様。お怪我は?」
 「この程度、かすり傷だ」

 彼は剣を壁に立てかけ、席につく。
 エミリアはそばに跪き、その傷痕に手をかざし祈りをはじめた。

 「このくらい大丈夫だ」
 「いいえ、傷が膿んでは大変です。治癒師もなかなか呼べないのですよね? ですから私が」
 「すまぬ」
 「謝らないでください。私がそうしたいのです」

 エミリアの手から温かな光が放たれる。少しずつ傷口は塞がり、やがて跡形もなく消え去った。

 (ここへ来た頃より魔力が強くなっていないか……?)
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