月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 初めのうちは痛みを軽減する程度だったが、近頃は傷を消し去るほどの力がある。

 「……ありがとう、エミリア」

 感謝の言葉とともに微笑むと、エミリアははにかんだ。
 卓には、温かなスープと焼きたてのパンが並んでいた。戦いのあとの静けさが心地いい。
 エミリアが手を伸ばし、レオナールの肩にそっと触れた。その指先の温もりが、冷えた体に染みていく。

 「レオナール様が戦っている間、風が騒いでいました。……まるでなにかを祓っているように」
 「祓う、か。そうならいいが」

 レオナールはスープを口に運んだ。温かな味が喉を通り、胸の奥が熱を帯びる。

 「真の姿に戻れるのは、夜の間だけなのですね」
 「ああ。皮肉な話だ」

 エミリアは小さく首を振った。

 「それでも、私はその姿でお会いできてうれしいです」

 レオナールは一瞬、息を詰めた。
 誰かの言葉に心を掴まれることなど、今まであっただろうか。

 「王都にいた頃、呪いによって異形に変わると聞いていたので驚きましたが」
 「異形?」
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