月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 レオナールの静かな声に揺るぎないものが滲む。
 エミリアが顔を上げると、彼の瞳の奥には春のようにあたたかく優しい光があった。
 窓の外から再び鳥のさえずりが聞こえてくる。

 「あたたかな春が来ましたね」
 「ああ。短い春だが、たしかに春だ」

 長く続く呪いの中にも、きっと春は訪れる。
 そう信じながら、エミリアはそっと椅子の肘掛けに触れ、老いた指先に自分の手を重ねた。
 その瞬間、少し驚いたように目を上げたレオナールは静かに微笑んだ。
< 93 / 224 >

この作品をシェア

pagetop