あなたとは合わないと思っていたけれど
 今日の主役の義父の周りには、大勢の人が集まっていた。すぐに挨拶できそうにないので、武琉とふたりで少し離れた場所で待つことにした。

 その間も武琉の知人がやって来ては彼に声をかける。香澄にとっては初対面の相手ばかりなので笑顔で挨拶をする程度のやり取りで、あくまで武琉のおまけのような扱いだ。

 そんな中、少し驚いたような声音で香澄の名前が呼ばれた。

「西條香澄?」
(えっ、私?)

 こんなところで知人に会うとは思っていなかった。

 驚き声の方に視線を向けると、同年代の男性がこちらを見ていた。

 スタイリッシュなネイビーのスーツに華やかな場に相応しいネクタイ。ダークブラウンのショートヘアでとても爽やかな印象の人物だ。

(どこかで見たこがあるような……)

 戸惑っている内に、男性は距離を縮めてきた。

「やっぱり香澄だ」

 彼は懐かしそうに目を細める。

「あの……失礼ですけど」

「あ、分からないか。高校のときに同じクラスだった北(きた)山(やま)英(えい)二(じ)だよ」

 名前を聞いた瞬間、記憶が呼び起された。目の前の洗練された大人の男性に、幼さの残る高校生の顔が重なり同化する。

「北山君……すごく変わったから分からなかった。久しぶりだね」

 香澄は驚きを抑えられない上ずった声で答えた。

 英二とは高校一年のときに、同じクラスでかなり仲良くしていた。
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