あなたとは合わないと思っていたけれど
 厳しい言葉に、胸が痛くなった。

「ごめんなさい。でもここに来たのは少し休憩しようとしただけなんです。そしたらあなたたちがいて……」

 香澄の声がだんだん小さくなっていく。

 後ろめたい部分があるからというのもあるが、武琉の前で早織たちと揉めているこの状況が耐えがたいからだ。

 せっかくの義父の誕生日にこんなことになってしまったら、いくら寛容な武琉でも不快になっているだろう。

 しかも相手は彼にとっては長い付き合いの早織だ。

(武琉さん、怒ってるよね)

 彼の怒っている顔を見るのが怖くて、目を伏せた。

 けれど胸が痛くなったそのとき「誤解だ」と武琉の武琉の迷いのない声がした。

 香澄が驚き視線を上げたのと、武琉が香澄の目の前までやってきたのは同じタイミングだった。

 武琉の体が、早織たちの強い視線を遮ってくれている。

 彼は心配そうな表情で香澄を見つめた。

「大丈夫か?」
「う、うん」

 香澄は戸惑いながらも、体中に安心感が広がっていくのを感じていた。

「ごめんなさい、もめ事を起こしてしまって」
「大丈夫」

 武琉はそう言うと、背後の早織たちを振り返った。

「武琉君! さっきの話聞いたでしょ? 香澄さんが私たちの話をこっそり聞いてたの。酷いと思わない?」

 早織の感情的な声が響く。

「香澄は俺を探していたんだ。早織を追いかけてきたわけじゃない」
< 112 / 171 >

この作品をシェア

pagetop