あなたとは合わないと思っていたけれど
十章 はじめての夜
旅行は二泊三日で北海道に行くことに決めた。香澄が行きたいところをピックアップし無理ないスケジュールで回ることになっている。
小樽で運河沿いを散策するのが楽しみだ。オルゴール堂にも行きたい。ニセコでフティングなどアクティブに過ごすのも捨てがたい。温泉と北海道グルメも欠かせない。
香澄は最近の落ち込みは忘れて、ワクワクしながらスケジュールを立てた。旅行は武琉が休みを取れるのは七月半ばになった。
出発の前々日に香澄は菜恵の誘いで食事に行った。
「香澄が旅行? 本当に?」
菜恵に報告するとかなり驚いている様子だった。
「うん。北海道に行ってくる。人生初だから楽しみ」
「外出嫌いの香澄が旅行を楽しみにするなんて……」
「自分でも意外だよ」
「そうだよね。あとさ、ホテルって同室でしょ? 大丈夫なの?」
契約結婚のふたりだと知っているからこそ心配してくれているのだろう。その気持ちはよく分かる。
「……うん」
予約したのはスーペリアルームを一室。ベッドはツインだけれど、一緒の寝室で寝ることになる。
香澄も初めは迷い、シングルルームを二部屋取った方がいいか武琉に聞いた。彼はリビングがある広い部屋を一部屋の方がゆっくり過ごせるだろうのことだった。
香澄としては武琉さえ嫌じゃなければ同室でもいい。むしろせっかくの旅行を一緒に楽しみたい気持ちがある。
(旅行でもう少し仲良くなれるかな)
そんなことを考えていると、いつの間にか菜恵が香澄をじっと見つめていた。
「菜恵?」
「ねえ、香澄は天谷さんのこと好きになったんでしょ?」
菜恵の指摘に香澄の心臓がどくんと跳ねる。
「な、なんで?」
「そうだよね? 見てたら分かるよ。素直になって」
菜恵はごまかしを許さないかのように断言する。香澄は躊躇いながらも静かに頷いた。
「……そっか。やっぱりね」
「やっぱりって?」
香澄は気恥しさを感じながら目を伏せる。
「だってあの天谷さんだし……それにね、香澄が契約結婚するって聞いたときから、もしかしてって思ってたの」
菜恵の発言は予想外だった。
「どうして?」