あなたとは合わないと思っていたけれど
 香澄は近くのカフェかどこかで話すと思っていたこともあり戸惑いを覚えたが、武琉は通い慣れているのかなんの躊躇いもなく入店した。

 店内はそこまで広くないが、客席の間にゆとりがあるので、人の耳を気にせず話すことができる。
 コース料理が運ばれてきてしばらくは他愛のない話をした。同じ会社という共通点しかないのでだいたい仕事の話になる。

「西條さんは今どんな仕事を?」
「新機体のエンジン部分の調達を担当しています」
「ああ、新機体の話は聞いている。納入は一年後だったか?」
「そうです」
「楽しみだな」
「天谷さんが操縦する機体になるかもしれませんね」

 当たり障りのない会話が続くが、初対面に近い相手にしてはかなり話しやすい。
 初めに感じていた戸惑いと気まずさはいつの間にか薄れていった。

(でも相談って何かな?)

 メインディッシュが運ばれてきて、香澄がいつ本題に入るかなと考えていたとき、武琉がついに切り出した。

「実はこのまえ、西條さんと野崎さんの会話を聞いてしまったんだ」
「え?」

 その件を蒸し返すとは思わなかった。驚く香澄に、武琉はばつが悪そうな表情を向ける。

「聞き耳を立てたわけじゃないんだが、野崎さんの声はよく通るから」
「……そうなんですね。たしかに声が大きかったかもしれません」
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