あなたとは合わないと思っていたけれど
「否定しきれない。北海道グルメって名前だけで美味しそうだからね」

 和気藹々と話していると、いつの間にか部屋の前に到着していた。

「今度お土産届けるよ」
「ありがとう。あ、そうだ。マンションのゲストルームについて教えてほしいんだけど」
「ゲストルーム? たしかコンシェルジュのところに……」

 返事をしようとしたとき、武琉が香澄の肩をぐいと抱き寄せ口を開いた。

「その件は俺から案内します。後で詳細を連絡しますよ」
「え?」
「妻はまだ利用したことがないので」

 英二は一瞬驚いたような表情になったが、すぐに何かに気づいたような笑みを浮かべて、武琉に丁寧に頭を下げる。

「助かります。ではこれで失礼します」

 香澄も英二に手を振って別れた。

 
 三日ぶりの自宅に戻ると、安心感がこみあげた。

 旅行は楽しかったけれど、やっぱり家は落ち着く。

 香澄は玄関でキャリーケースの汚れを落として室内に運ぼうとしたが、武琉が何も言わず香澄の荷物も運んでくれた。

 軽々と運ぶその逞しい姿に、香澄の胸はときめいた。

(やっぱり好きだな)

 彼の少しの親切でも、香澄の落ち込んでいた心は浮上してモヤモヤが消えていく。

「武流さん、ゲストルームの件、忙しいのに気をつかってくれてありがとうね」

 きっと不慣れな香澄のために、代わってくれたのだろう。

「礼なんて言わないでくれ」
「え?」
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