あなたとは合わないと思っていたけれど
 武琉が一貫して香澄を信じ味方をして、早織に厳しく接してくれたのはうれしかったけれど、早織の怒りの顔を思い出すと後味が悪い。

(彼女はこのまま引いてくれるのかな?)

 武琉も思うところがあるのか、難しい顔をしている。

 重い空気を引きずったままマンションの近くまでたどり着くと、エントランスの前で見知った顔を見つけた。

「北山君?」

 まだ日中だと言うのに英二と会うとは思わなかった。

「香澄?」

 彼もこの時間に香澄と会うとは思っていなかったようだ。意外そうな表情を浮かべたあと、香澄の隣の武琉に気が付き、よそ行きの表情に変えた。

「天谷さん、こんにちは」
「こんにちは」

 武琉は感じよく答えた。しかしふたりの間にはどことなく気まずい空気が漂っている。

「旅行に行っていたのか?」

 彼は香澄の小さなキャリーケースに目を向けていた。

「そうなの。北海道に行ってたんだ」

 英二が香澄の隣に並び、自然と三人で歩く形になった。

「北海道か。夫婦で?」
「うん。すごくよかったよ」
「よかったな。香澄、前から北海道に行きたいって言ってたもんな」
「そう。高校のときに北海道の観光スポットをたくさん調べたでしょ? あのときからずっと気になってたところとか沢山あるんだ」
「あー香澄熱心に調べたもんな。でも本当は観光じゃなくて食べ物が楽しみなんだろ」

 揶揄うような口調に香澄は苦笑いした。
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