あなたとは合わないと思っていたけれど
 いわゆる上流階級に属しているなら、政略結婚などあるのかもしれない。

(相談って、同じ悩みを抱える者同士て、解決策を考えようってこと?)

 そんな考えが浮かんだ直後、武琉が真剣な目で香澄を見つめた。

「西條さん、俺と結婚してくれないか?」

(……え?)

 周囲から聞こえる騒めきが一瞬遠くなった気がした。

「……あの、今なんておっしゃいました?」

 あり得ない台詞が聞こえたような気がした。香澄はフリーズしかけたが、すぐに気を取り直し問い返す。

(結婚してって言われた気がするけど、聞き間違いだよね)

 まともに会話をするのは今日が初めてなのに、プロポーズなんてされるわけがない。

「俺と結婚してほしいと言った」

 しかし武琉は大真面目に繰り返した。
 香澄は唖然としたまま武琉を見つめる。

(嘘でしょ? 天谷さんってこんな冗談言う人なの?)

 でもその割に彼の端正な表情からは、揶揄う様子は見つけられない。

「……あの、おっしゃる意味がよく分からないのですが」

 武琉はすぐに「ごめん、言葉が足りなかった」と頷き改めて説明をはじめる。

「さっきも言ったけど俺も西條さんと同様に家族に結婚を強要されて困っているんだ。だから同じ悩みを持つ同士で結婚しないか?」
「ほ、本気で言ってるんですか?」

 動揺する香澄に、武琉は深く頷き言葉を続ける。
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