あなたとは合わないと思っていたけれど
二章 理想の相手
「TOKYO Delivery,ASJ727 gate3 to FUKUOKA Flight leve 35……」(東京デリバリー、こちらはASJ航空727便です。3番ゲートから福岡空港行き)
「ASJ727TOKYO Delivery ATC clearance」(ASJ727便、管制承認を伝達します)
午前九時十五分。管制官からの許可が下りると、武琉が搭乗するASJ727便は福岡空港に向けて飛び立った。もう数えきれないほどのフライトを熟しているが、それでも毎回緊張を覚える。
大勢の人を安全に目的地に運ぶこと。新たな場所に夢を叶えるために旅立つ人や、大切な人に会いに行く人。様々な背景を持つ乗客がいる。
武琉はいつも自分の仕事に、大きな責任とやりがいを感じている。
「順調だな」
無事離陸すると、隣の席の渋(しぶ)谷(や)[悠森22]機長が微笑んだ。武琉もほっとしながら「はい」と返事をする。
「天候も問題なさそうです」
上空で高度を保ち自動運転への切り替えが済むと、武琉はタブレットを見ながらつ告げた。
今から福岡空港に向かい、その後は名古屋など二か所の空港を経由して羽田に戻る。
国内便はフライト時間は短いが、その分一日の内に飛ぶ回数が多い。
武琉は国際便の乗務が多少多いが、国内便もバランスよく担当している。なるべく多くのフライトを熟すことで、機長昇進に向けて着々と経験を積んでいた。
何の問題もなく充実した日々を送っている。そのはずだった。
天谷武琉は、『天谷物産』社長の次男として生まれ、幼い頃から将来は会社の発展のために尽力することを期待されて厳しく育てられた。
幼稚園に入園する前の幼い頃から一日のスケジュールが厳しく管理されていて、自分の意志とは関係なしに教育を詰め込まれた。
しかしそんな環境にありながら、武琉は自我が強い子供だった。