あなたとは合わないと思っていたけれど
 彼の家は上流階級なのは分かっていた。実家の住所を事前に聞き、高級住宅地に所在しているのも調べてあった。

(でもここまですごいとは思わなかった!)

 豪邸が居並ぶ住宅街の中でも、天谷家は抜きんでて広大だった。

 純日本家屋といった歴史を感じる門構えで、敷地を高い塀がぐるりと囲んでいる。

(これが個人の住宅? 広すぎるし中の様子が全然見えないんだけど)

「ああ。古風だと驚いたんだろ? でも中は現代風にリフォームしてあるから安心して。さ、行こう」

 自分の生家だから当然武琉に遠慮はなく、自然な様子で門を開き中に入っていく。

 香澄も彼の後に続いた。内心かなり緊張している。こんな家に住む彼の両親に、自分のような一般人が結婚相手です、なんて挨拶をしたところで受け入れて貰えるのだろうか。

 彼の歴代お見合い候補の中で、一番の庶民なのは間違いないだろう。

(門前払いをくらったりして……)

 門から玄関までかなりの距離がある。移動する間も香澄はすっかり気弱になって、頭の中には不安が渦巻いていた。それでも武琉に弱音を伝えることはできなかった。

 彼の方も香澄の様子を気にかける気配はない。契約結婚なんだから当然だ。

 彼に精神的な面でのサポートは期待できない。そんな関係に一瞬心細さを感じたが、香澄はすぐに気弱な自分を戒めた。

(甘えたことは言わずに頑張らないと)
< 42 / 171 >

この作品をシェア

pagetop