あなたとは合わないと思っていたけれど
(今のって呆れた笑いかな?)

 やはり迷惑だと感じたのだろうか。何と声をかけようかと考えていると、武琉がくるりと振り返った。彼は意外にも不快な表情ではなく、面白そうな笑みを浮かべていた。

「リラックスできそうなクッションだな。俺は気にしなから気兼ねなく寛いで」
「あ、ありがとうございます」

 武琉は観察するように部屋の中を見回した。

「思ったよりも西條さんの荷物が少ないな。もしかして遠慮してる?」
「いえ、そんなことないです。家電は持ち込まなかったし、他の家具は自分の部屋に全部入っているので少なく見えるのかもしれません」
「そうなんだ。もし必要なものが有ったら買うから遠慮しないで言って。リビングも俺に確認しないで西條さんが好きなようにしていいよ」

 武琉は事前に交わした条件を、完全に守ってくれるつもりのようだ。

「今後のことについて、後で少し話し合おう」
「あ、はい、分かりました……あの夕食は済んでいますか? 私はまだでこれから食べようかなと思ってたんですけど、まだなら天谷さんの分も用意しましょうか」

 お互い干渉しない生活とはいえ、この状況では確認せずにはいられなかった。

「帰りに食べてきた。俺は基本的に自炊はしないんだ。しばらく部屋に籠ってるから西條さんはゆっくり食べていて」
「はい」

 武琉はと自室に引き上げていった。
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