あなたとは合わないと思っていたけれど
香澄が引っ越しをして三日後に武琉が帰宅した。
メッセージで引っ越し完了の報告などやり取りはしていたものの、いざ顔を合わすとなると緊張する。ドキドキしながら待っていると、玄関が開き彼が入ってきた。
「ただいま」
玄関まで出迎えた香澄に、彼はごく自然な調子で言った。
「お帰りなさい」
目が合った瞬間、お互い微笑んでいた。武琉は本当にフレンドリーな挨拶なのかもしれないが、香澄は多少感じる気まずさを誤魔化すための笑顔だった。
「新居はどう? 不自由なことはない?」
武琉がリビングに向かいながら言う。
「大丈夫です。ただリビングに私が持ってきたクッションや、細々したものを置いたので、天谷さんが気にならないか心配で」
香澄は彼の後を追いながら答えた。
「クッション? 置いてあるソファじゃ嫌だった?」
「ソファに不満がある訳じゃないんですけど、お気に入りのものだから使いたくて」
そうこう言っているうちに武琉がリビングの扉を片手で開いた。するとお洒落なモノトーンのリビングに、どんと置かれた巨大クッションが視界に入ったのだろう。彼が立ち止まり、ふっと笑った気配を感じた。