あなたとは合わないと思っていたけれど
(会社ではエリートとかクールとか言われてるけど、実は愛想のいいひとだよね)

 笑顔が自然で素敵だ。きっと彼は誰が相手でもうまくやっていけるのだろう。

 人とは狭く深く付き合う方が好きな香澄とはタイプが全然違っている。

 香澄は自分用にコーヒーを淹れることにした。少し迷って彼に声をかける。

「コーヒー飲みますか?」
「……お願いしようかな」

 ほんの僅かな間が空いた。断るか受け入れるか悩んだのだろうか。

 香澄はキッチンに入り、棚に仕舞ってあったコーヒーカップを取り出して、引き立てのコーヒーをカップに注いでリビングに戻った。
 リビングにコーヒーの香りが漂う。

「本格的だな。いつドリップしているのか?」
「いつもじゃないですよ。手軽なスティックコーヒーで済ますこともありますし、その日の気分によってです」

 疲れているときは手間がかかることはしない、プライベートでは無理をしないのが香澄のモットーだ。でも元気があるときは、より美味しいものを楽しみたい。

 香澄はコーヒーやお茶を自宅で楽しむのが好きで、結構本格的な器具を揃えている。

「そうなんだ」

 武琉はまだ熱いだろうコーヒーを口に運んだ。

(猫舌じゃないんだ)

 彼のことは殆ど知らない。一応夫婦になって一緒に住むんだから、少しは知っておいた方がいいかもしれない。

 彼が飲む様子を眺めていると、目が合った。
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