あなたとは合わないと思っていたけれど
四章 妻がいる暮らし
「下層暖湿気が流入して大気の状態が不安定になっています」
武琉はモニターに表示された高層天気図と衛星写真を確認しながら、渋谷機長に報告した。
下層暖湿気とは、地表温かく湿った空気のことだ。上層気流に乗り高度が上がると、大雨や突風など不安定な天候を引き起こす。
パイロットはフライト前に衛星写真や気象庁から定期的に送られてくるデータを元に出発地と目的地の状況を確認する。
安全な航行の為に必須の確認で、武琉は普段から気象学についても積極的に勉強している。
「今日は荒れるかもしれないな」
渋谷機長が腕を組みながら呟いた。
「しかし航行に大きな問題はないでしょう」
武琉は天気図を再度確認してから、結論した。
ウエザーブリーフィングを終えた武琉は、運行管理センターの廊下を歩いていた。これから整備部に行き機体の確認を行う。
香澄との交渉が成立し、契約結婚をして一カ月が経った。
社内で結婚報告をすると想像していた以上に驚かれた。親しくしている同僚は皆、武琉は独身主義で結婚とは無縁だと思っていたらしい。
実際その通りだが、曖昧に笑って『考えが変わったんだ』とだけ返した。
しばらく噂の的にされた以外は、至って順調な結婚生活だった。武琉が結婚生活に対して負担に感じ後ろ向きになっていた原因である家族と家庭への配慮は、香澄が相手なら必要がない。
彼女は武琉がいなくても自由に過ごしている。
一週間連絡をしなくても、彼女は無反応。安否を窺う連絡すらなかった。スケジュールを知らせているとはいえドライな反応だ。
仕事中に何か有った場合は、社内ルートで香澄に連絡がいくようになっているから、無駄なやりとりは必要ないと考えているのだろうか。
お互い干渉し合わないと条件をつけてスタートした契約結婚だが、武琉が想像していた以上に彼女は割り切っている。
武琉としては、転居して慣れない環境にいる彼女にもしフォローが必要なら、名ばかりの夫とはいえ、出来る範囲で協力するつもりでいた。
しかしまったく必要がないようだった。
淡々として自立した女性。それが香澄だ。落ち着いた雰囲気で受け答えは柔らかだが、内面は結構強い。
武琉と結婚したことで、彼女の周りでもそれなりに噂を立てられていたはずだが、平然としていて困った様子はない。武琉に対応を相談することはなかった。
とにかく香澄は本人が言うとおり自己完結型の人間で、武琉を必要としていないのだ。
武琉はモニターに表示された高層天気図と衛星写真を確認しながら、渋谷機長に報告した。
下層暖湿気とは、地表温かく湿った空気のことだ。上層気流に乗り高度が上がると、大雨や突風など不安定な天候を引き起こす。
パイロットはフライト前に衛星写真や気象庁から定期的に送られてくるデータを元に出発地と目的地の状況を確認する。
安全な航行の為に必須の確認で、武琉は普段から気象学についても積極的に勉強している。
「今日は荒れるかもしれないな」
渋谷機長が腕を組みながら呟いた。
「しかし航行に大きな問題はないでしょう」
武琉は天気図を再度確認してから、結論した。
ウエザーブリーフィングを終えた武琉は、運行管理センターの廊下を歩いていた。これから整備部に行き機体の確認を行う。
香澄との交渉が成立し、契約結婚をして一カ月が経った。
社内で結婚報告をすると想像していた以上に驚かれた。親しくしている同僚は皆、武琉は独身主義で結婚とは無縁だと思っていたらしい。
実際その通りだが、曖昧に笑って『考えが変わったんだ』とだけ返した。
しばらく噂の的にされた以外は、至って順調な結婚生活だった。武琉が結婚生活に対して負担に感じ後ろ向きになっていた原因である家族と家庭への配慮は、香澄が相手なら必要がない。
彼女は武琉がいなくても自由に過ごしている。
一週間連絡をしなくても、彼女は無反応。安否を窺う連絡すらなかった。スケジュールを知らせているとはいえドライな反応だ。
仕事中に何か有った場合は、社内ルートで香澄に連絡がいくようになっているから、無駄なやりとりは必要ないと考えているのだろうか。
お互い干渉し合わないと条件をつけてスタートした契約結婚だが、武琉が想像していた以上に彼女は割り切っている。
武琉としては、転居して慣れない環境にいる彼女にもしフォローが必要なら、名ばかりの夫とはいえ、出来る範囲で協力するつもりでいた。
しかしまったく必要がないようだった。
淡々として自立した女性。それが香澄だ。落ち着いた雰囲気で受け答えは柔らかだが、内面は結構強い。
武琉と結婚したことで、彼女の周りでもそれなりに噂を立てられていたはずだが、平然としていて困った様子はない。武琉に対応を相談することはなかった。
とにかく香澄は本人が言うとおり自己完結型の人間で、武琉を必要としていないのだ。