あなたとは合わないと思っていたけれど
 香澄は武琉と適切な距離を置きたい様子だったが、善意をシャットアウトするようなタイプではないのだろう。

 武琉はショップを見回して適当なお土産を探した。あまり高価なものは自分たちの関係では相応しくない。

「これがいいか」

 武琉は美しい星座が刻まれたキャンドルを手に取った。自宅で過ごすのが好きな香澄なら使いどころがありそうだ。するとその様子を見ていた菜恵が顔を出して『香澄は射手座ですよ』と教えてくれたので、射手座モチーフのものを選び直した。


 ロンドンから東京までのフライトを終えた武琉は、夜八時過ぎに自宅マンションに帰りついた。

「ただいま」

 リビングの扉を開けて声をかけても返事はなかった。

 武琉のスケジュールは共有しているので、彼女は武琉が今日帰宅することを知っているはずだ。あえて部屋に籠っているのだろうか。

 わざわざ部屋まで行って声をかけるのははばかられて、とりあえずお土産をキャリーケースから取り出しダイニングテーブルに置いた。

 その直後、香澄が巨大ビーズクッションの中央で、体を丸めて眠っていることに気がつき、武琉は一瞬固まった。

「……そこにいたのか」

 気配が全くなかったので、気づかなかった。

 それにしても香澄のこの態度は意外だった。

 香澄は武琉が在宅中は、自室に引っ込んでいることが多い。武琉はその行動を、彼女の線引きだと受け止めていた。
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