あなたとは合わないと思っていたけれど
 それなのに、武琉の帰宅日にこんなに堂々とリビングで休んでいるとは。

 よく見ると巨大クッションの隣にあるローテーブルの上には、ワインボトルとグラス、料理が綺麗に盛り付けられた皿が並んでいた。
 ワインは半分くらい減っているが、料理は少しか食べていないようだ。

(ご馳走だな。もしかして自分でつくったのか?)

 とても綺麗に盛り付けられているが、どことなく家庭的な雰囲気もある。

 香澄はひとりで料理を用意してワインと共に楽しもうとしたが、すぐに酔っ払って寝てしまったのだろうか。

(もしかして俺の帰宅日だって忘れてたのか?)

 または勘違いをしているのだろうか。

(普段は楽しく過ごしているみたいだな)

 武琉は思わず笑みをこぼした。

 自分は家でじっとしているのは性に合わず、時間の無駄とすら感じてしまう。

 でも香澄は引きこもっているというより、人生を楽しんでいるように見える。満足そうな顔で眠っているのがその証拠だ。

 せっかく気持ちよく休んでいるのだから起こすのは止めよう。

 香澄をそのままにしてシャワーを浴びに行こうと、音を立てないようにそっとキャリーケースを持ち上げた。

 しかし人の気配を感じたのだろうか。香澄がぴくりと身動きをして目を開いた。

 彼女はぼんやりとした表情で瞬きをしていたが、武琉と視線が合った数秒後に、目を見開いた。

「あ、あれ? 武琉さん?」
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