欠けていく世界で、きみの光を見つけた
第二話
「涼しい……」
湯気の残る脱衣所から一歩外へ出ると、熱い空気がすうっとほどけていった。
夏休み直前。
テストから解放されていちばん楽しいこの季節に、私たち二年生には、ひとつの課外研修が用意されている。
自然体験メインの一泊二日の宿泊学習。
山の近くの施設で、ご飯を作ったり、レクリエーションをしたりするイベントだった。
濡れた髪の先から、ぽた、と小さな水滴が落ちる。
私はタオルでそっと髪を押さえながら、ゆっくりと襖を開いた。
「三浦さん、おかえり」
客間の机で何かを書いていた担任の佐藤先生が顔を上げる。
穏やかな声にホッとしながら、私はぺこりと頭を下げた。
「はい……ありがとうございます」
畳の上に置かれた座布団と、テーブル。
教室じゃない場所で、先生と二人きりなんて、なんだか少し不思議な感じがした。
「お風呂、大丈夫だった?」
「はい……ゆっくり入れました」
そう答えると、先生はほっとしたように頷いた。
「それならよかった」
適当に詰め込んだ着替えで膨れ上がっているかばんをぎゅっと抱きしめた、そのとき。
ブーッ、とポケットの中で小さな振動音が鳴る。
「ご、ごめんなさい……」
慌ててポケットを押さえた私に、先生は少しだけ目を細めた。
「大丈夫。常に持ち歩いてね。何かあったら、すぐ連絡していいから」
その優しい言い方に申し訳なくなって、私は小さく頭を下げる。
「……本当は禁止なのに、ありがとうございます」
小さく揺れる言葉に、先生は少しだけ眉を下げた。
「大浴場に入れないのは残念だったかもしれないけど、薄暗いと危ないからね」
やわらかい声に、私はこくりと頷く。
先生は少し考えるようにしてから、やわらかく付け加えた。
「夜は廊下も暗くなっちゃうから。外には出ないと思うけど、一応気をつけて」
その一言に、頭の中で、ぼんやりとした景色が広がる。
夜は、私にとって何があるのかわからない世界だ。
素直に頷きながら、私はぎゅっとカバンを抱きしめた。
「……はい。ずっと部屋にいます」
そう答えると、先生は「うん」と優しく頷いた。
湯気の残る脱衣所から一歩外へ出ると、熱い空気がすうっとほどけていった。
夏休み直前。
テストから解放されていちばん楽しいこの季節に、私たち二年生には、ひとつの課外研修が用意されている。
自然体験メインの一泊二日の宿泊学習。
山の近くの施設で、ご飯を作ったり、レクリエーションをしたりするイベントだった。
濡れた髪の先から、ぽた、と小さな水滴が落ちる。
私はタオルでそっと髪を押さえながら、ゆっくりと襖を開いた。
「三浦さん、おかえり」
客間の机で何かを書いていた担任の佐藤先生が顔を上げる。
穏やかな声にホッとしながら、私はぺこりと頭を下げた。
「はい……ありがとうございます」
畳の上に置かれた座布団と、テーブル。
教室じゃない場所で、先生と二人きりなんて、なんだか少し不思議な感じがした。
「お風呂、大丈夫だった?」
「はい……ゆっくり入れました」
そう答えると、先生はほっとしたように頷いた。
「それならよかった」
適当に詰め込んだ着替えで膨れ上がっているかばんをぎゅっと抱きしめた、そのとき。
ブーッ、とポケットの中で小さな振動音が鳴る。
「ご、ごめんなさい……」
慌ててポケットを押さえた私に、先生は少しだけ目を細めた。
「大丈夫。常に持ち歩いてね。何かあったら、すぐ連絡していいから」
その優しい言い方に申し訳なくなって、私は小さく頭を下げる。
「……本当は禁止なのに、ありがとうございます」
小さく揺れる言葉に、先生は少しだけ眉を下げた。
「大浴場に入れないのは残念だったかもしれないけど、薄暗いと危ないからね」
やわらかい声に、私はこくりと頷く。
先生は少し考えるようにしてから、やわらかく付け加えた。
「夜は廊下も暗くなっちゃうから。外には出ないと思うけど、一応気をつけて」
その一言に、頭の中で、ぼんやりとした景色が広がる。
夜は、私にとって何があるのかわからない世界だ。
素直に頷きながら、私はぎゅっとカバンを抱きしめた。
「……はい。ずっと部屋にいます」
そう答えると、先生は「うん」と優しく頷いた。