欠けていく世界で、きみの光を見つけた
暗い部屋でぼんやりと寝転んでいると、コンコン、と控えめなノックが響いた。

「菜由、入っていい?」

聞こえてきたお母さんの声に、慌てて目元を拭ってベッドから起き上がる。

返事をする前にそっとドアが開いて、廊下の明かりが部屋に差し込んだ。

つまずいたりすることのないように家具が少なくシンプルな私の部屋とはいえ、電気もつけずにいたのはきっと不自然だ。

しまったな、と思いながら視線を向けると、お母さんの後ろにはお父さんも立っていた。

「どうしたの?」

できるだけいつも通りに言うと、お母さんは困ったように眉を下げ、私の部屋へと入ってきた。

「ごめんね、菜由。菜由を傷つけるようなことになっちゃって」
「ううん。私は大丈夫だよ……」

潤んだ瞳がバレないように視線を落とす。

お母さんはそんな私と視線を合わせるように、ベッドの前に膝をついて私の両手を手にとった。

「陸の前では優しいこと言ってくれたけど……本当は傷ついてるでしょう」

一瞬緩んだ感情は、素直に胸をぎゅっと掴んでいく。

「そんなこと……」

否定しようとしても、声が震えてしまいそうで、言葉が続かなかった。

だけど、ここで私が泣いたら、陸がもっと悪者になってしまうという気持ちも残る。

陸の言葉に傷ついたのは本当だけど、陸もまたたくさん怒られてばかりで辛いんだ。

こういうとき、お母さんたちは陸の部屋へは行かない。

いつもいちばんに私の心配をするから。
それは、私でもわかっていることだった。

小さく息を吐き出して、私はお母さんの手を握った。

「大丈夫。二人とも、いつも気遣ってくれてありがとう」

お父さんにも視線を向けて、私は目を細めた。

「でも、陸は私の分まで怒られることが多いから、きっと寂しいんだよ……」

こちらを見るふたりに、小さく頷く。

「だから、さっきのことは許してあげて」

本当はまだ、胸の奥が苦しかったけど、その気持ちも決して嘘じゃない。

隣に座ったお母さんが、そっと私の肩を抱いた。

「菜由は、優しいね……」

やわらかい声が、すぐ近くで落ちる。

「人より大変な思いもしてるんだから、もっとわがままになったっていいのに」

その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が途端にぎゅっと苦しくなった。

ひまりとふうかのような、心から大好きだと思える友達がいる。

泰ちゃんのような、事情を知った上で手を貸してくれる幼馴染がいる。

そんなみんなと過ごす毎日が、ちゃんと楽しいって思ってた。

だけど——。

私はやっぱり、人より大変な人間なんだって。

言葉にされたその事実が、胸の奥で重く沈んだ。

泣きたくないのに、涙がにじみそうになる。

私は俯いたまま、泣きそうなのがバレないように、ぎゅっと手首を握った。
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