欠けていく世界で、きみの光を見つけた
『これから先、長く付き合っていく必要があります』

小学五年生の私は、静かな診察室で聞いたその言葉が、ずっと頭の奥に残っていた。

その日も、お医者さんに目を休めなさいと言われたばかりだったのに、うまく眠れなくて。

私は布団の中でこっそりスマホを開いた。

【目 ぼやぼや 暗闇】

検索欄に打ち込むと、画面にはたくさんの記事が連なっていく。

暗いところで見えづらくなる症状。
夜になると視界が悪くなる原因。

指で画面をゆっくりスクロールしていた、そのとき。

『網膜色素変性症』

昼間、病院で聞いた気がする名前が目に飛び込んできて、私は思わず指を止めた。

気になって開いたページには、難しい言葉がずらりと並んでいる。

『視野狭窄』
『夜盲』

難しい漢字ばかりで、意味はよく分からない。

だけど、スクロールしていくうちに、少しずつ知っている言葉が増えていった。

『暗いところで見えづらくなる』
『少しずつ視野が狭くなる病気』

お医者さんから聞いた言葉も重なって、胸の奥が、じわりと冷えていく。

そして、さらに画面を下へ動かした、そのとき。

『現在、確実な治療法はありません』

思わず指が止まった。
そのすぐ下にあった文字が、ゆっくり目に入ってくる。

『将来的に、失明する可能性もあります』

……目が、見えなくなる。

その言葉を理解した瞬間、呼吸が止まりそうになった。

見えなくなるって、どういうことなんだろう。

安心するはずの自分の部屋が、急に真っ暗に感じて、私はぎゅっとスマホを握りしめた。

『失明 仕事』
『失明 結婚』

そのページから離れたあとも、調べる手が止まらなかった。

苦しくなっていく呼吸も無視して、私は何度も画面をスクロールする。

そのうち、息がうまく吸えなくなって、頭の奥が痺れるみたいに熱くなった。

怖くなって、私は慌ててスマホを閉じ、布団の中に潜り込む。

……見えなくなるかもしれない。

みんなみたいに、普通に生きられなくなるかもしれない。

真っ暗な未来を想像して、私は布団の中に入っても、なかなか目を閉じることが出来なかった。
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