欠けていく世界で、きみの光を見つけた
当日まで一週間をきった学校は、準備も大詰めになり、文化祭一色になっていた。

吹奏楽部でも、文化祭のミニコンサートに向けて、毎日のように合奏練習が重ねられている。

「はい。一旦休憩。今指摘したところは、見直しといてね」

顧問の先生が手を叩くと、音楽室に一気にざわめきが広がった。

ガタガタと椅子を引く音の中、私は窓の外を見ながら、クラリネットをケースにしまう。

……まだ、完全には暗くなってない。

キリが良いタイミングで抜けられることにホッとして、私は静かに立ち上がった。

「菜由、帰るの?」

楽譜をめくっていたふうかが、不思議そうに顔を上げる。

「うん。今日もちょっと早めに」

笑って答えながら、私はクラリネットのケースを肩にかけた。

「最近、なんか忙しい?」

ふうかはやわらかい声のまま、小さく首を傾げる。

「発表前はいつも残るから、珍しいなって」

珍しく様子を窺うような視線に、どきりと胸が揺れた。

「うん、ちょっとね……」

私は軽く笑いながらそう答える。

ふうかは「そっか」と頷いたけれど、その視線はどこか心配そうだった。

ふうかだけじゃない。

文化祭の準備も時々早く抜ける私を、ひまりも気にしてくれていることは分かっていた。

本当は、ちゃんと話したい。
でも、どう説明したらいいのか分からない。

知られたくなくて、ずっと隠してきたことだから。

「じゃあ、また明日ね」

ふうかの優しい声に、私は慌てて笑顔を作った。

「うん、また明日」

小さく手を振って音楽室を出る。

背中に残る視線に気付かないふりをするしかできない苦しさが、少しずつ積み重なっていた。
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