欠けていく世界で、きみの光を見つけた
辺りが暗くなってからも、私たちは少し離れた場所に腰を下ろして、キャンプファイヤーを眺めていた。

大きな炎は夜空を赤く照らし、その光は私の視界にもはっきり映っている。

「そういえば、閉会式の演奏聞いた」

しばらく他愛もない話をしていた泰ちゃんが、不意にそんなことを言った。

「ひとりで吹いてたじゃん」

からかうような視線に、私は急に恥ずかしくなって肩をすくめる。

「クラリネットは、三年生がいないから。仕方ないの」

そう小さく答えると、泰ちゃんは小さく笑った。

「でも、堂々としててかっこよかったよ」

思わぬ言葉に、私は目を見開く。
少し間を置いて、泰ちゃんは付け足した。

「菜由っぽくないくらい」
「なにそれ、褒めてないよね」

思わず肩を押すと、泰ちゃんは楽しそうに笑った。

それは、私の大好きな笑顔だった。
近くで見えるその笑顔に、つられるように私も笑う。

「おふたりさん、ここにいたのね〜〜」

聞き慣れた声に目を向けると、ペットボトルのジュースを抱えたひまりとふうかが向かってきていた。

その後ろには直哉くんと晴斗くんの姿も見える。

火を囲む生徒たちの輪から少し離れた場所だったはずなのに、四人が来た途端、その空間はいつもの放課後みたいに賑やかになった。

「文化祭お疲れ様」

ペットボトルのジュースを受け取ると、手のひらに心地よい冷たさが広がる。

そのとき、ジュースを飲もうとしていた晴斗くんの動きがぴたりと止まった。

その視線の先が私たちの手元に流れていることに気づいて、私は反射的に手を引っ込めようとする。

けれど、それより早く、何かを察したように目を見開いた晴斗くんは、大げさなくらい大きな声を上げた。

「お前らやっぱり!!」

晴斗くんが声を上げた瞬間、ひまりとふうかが同時に顔色を変えた。

「晴斗。一旦キャンプファイヤー見てきたら?」

あまりにも急な方向転換に、泰ちゃんが吹き出すように笑う。

その隙に私は繋いだ手を離そうと、そっと指先を引いた。

けれど泰ちゃんは離す気がなかったようで、その手をさらに強く握り返す。

驚いて顔を上げた瞬間、いたずらを思いついた子どもみたいな笑顔が向けられた。

「晴斗。羨ましいだろ」

そう言いながら、繋いだ手を隠すどころか少しだけ持ち上げる。

思わぬ行動に一瞬で顔が熱くなって、私は思わず俯いた。

そんな私をよそに、泰ちゃんの行動を見たひまりは晴斗くんを引っ張るのをやめ、呆れたようにため息をついた。

「こう堂々とされると、それはそれで腹立つな」
「わかる」

静かに見守っていた直哉くんまで、ひまりに同調するように真面目な顔で頷く。

「菜由ちゃん、本当にこいつでいいわけ?」
「おい」

間髪入れずに返した泰ちゃんに、みんなの笑い声が重なった。

何も言えずにいる私の隣へ、ふうかがそっと腰を下ろす。

「ちゃんと話せた?」

周りには聞こえないくらい小さな声だった。
私は繋いだ手を見つめてから、そっと頷く。

「うん」

あの日、暗い教室の中で背中を押してくれた二人の顔が浮かぶ。

「ふうかたちの言う通りだった」

そう答えると、ふうかは安心したように目を細めた。

暗闇になんて負けないくらい大きな火を上げるキャンプファイヤーが、みんなの笑顔を照らしている。

隣を見れば、ずっと大好きだった、楽しそうに笑う泰ちゃんがいた。

夜は、今でも怖い。
これから先の未来だって、きっと簡単じゃない。

それでも。

暗闇の中で見つけた温もりを、私はもう知っている。

だから大丈夫。

繋いだ手を握り返しながら、私はみんなと一緒に笑い合った。
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