好きって送れなかった

秘密のスクリーンショット

あの日から、ふたりだけの“下書き”のやりとりが始まった。
誰にも見せたことのない気持ち。
誰にも言えなかった言葉。

スクリーンショットという形で、少しずつ送り合う
風変わりな夜のLIME。

_

【心葉】
「これ…3週間前の。『声、かけてみたい』って書いてあった笑」

【悠翔】
「おれも、それ似たやつある笑」
「これ ↓」

スクショ:『朝比奈さんの髪、綺麗だなって思った』

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

学校では、何も変わらないフリ。
隣の席で、他愛のない話しかしない。

でも、LIMEでは誰よりも近い。

(なんか、変な感じ)

昼休み、彼が教室の後ろで男子たちと笑っている声が聞こえる。
その姿を目で追いながら、心葉は思う。

(ふつうにしてるのに、私だけドキドキしてる)

その夜。

______

【悠翔】
「前にさ、好きな子に“好き”って言ったことがあるんだ」

 ̄ ̄ ̄

今日も下書きを送ろうとしていた心葉の指が止まる。

______

【悠翔】
「でもさ、次の日、その子に『ごめん、友達とふざけてただけ』って笑われた」

 ̄ ̄ ̄

スマホを持つ手と目頭がじんわりと熱くなる。

_____

【心葉】
「……ひどい」

【悠翔】
「俺も、そう思った。
でも、それ以来ずっと“本音”が怖くなったんだ。
冗談にされるのが一番きつい」

 ̄ ̄ ̄
スクショが添付される。
画面には、彼の下書き一覧。

その中のひとつに、こう書かれていた。

___

『朝比奈さんは、そんなこと絶対しないって、勝手に信じてる』

 ̄ ̄

涙が出そうになる。
信じてもらえていることが、こんなに嬉しいなんて。

心葉も、ひとつ送る。

______

【心葉】
「これ、まだ消せてないんだ。2ヶ月前の下書き」

スクショ:
『好き。でもきっと迷惑だよね』

【悠翔】
「迷惑じゃないよ。むしろ、嬉しい。すごく。」

 ̄ ̄ ̄

ふたりの心の距離が、また少しだけ縮まった気がした。

でも――

「ねぇ、心葉ちゃん」

次の日の放課後、美咲が不意に声をかけてきた。

「最近なんか、変じゃない?」

「……え?」

「ほら、スマホ見る回数とか、急にニコニコしてたりとか。なんか隠してるでしょ〜」

(……やば)

ごまかそうとしても、美咲の目は鋭い。

「もしかしてさ、好きな人できた?」

心葉の背筋がピンと伸びる。

「ち、ちがっ…」

「えー?絶対怪しい〜!」

(やばいやばいやばい!!)

「言っとくけどね、心葉ちゃんって顔に出やすくて、バレバレなんだよ?」

笑いながら言う美咲。
でも、その笑顔の奥が少しだけ読み取れなくて――
心葉は、胸がきゅっと締めつけられる。

(ごめん。まだ、言えない)

秘密のスクリーンショット。
秘密のLIME。
秘密の、想い。

誰にも言えない。
けど、今のこの関係が、心葉には何よりも大切だった。

…まだ秘密でいたらだめですか?
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