残響
泣いて、泣いて。

どうしていいのかわからなくて、
ただ泣くことしかできなかったあの頃の私へ。

もし、今の私が会いに行けるのなら、
ぎゅっと抱きしめてあげたい。

そして、こう言いたい。

「もう少しだけ……待ってあげて」

きっと、あの頃の私は言う。

「無理だよ」

「だって、何も言ってくれないじゃん」

「私、どうしたらいいの?」

そうだよね。

あの頃の私には、
待つ理由なんてなかった。

何を考えているのかも、
何に迷っているのかも、
この先どうしたいと思っているのかも。

何ひとつ、聞かされていなかった。

だから私は、
終わったのだと思った。

もう、私たちには未来なんてないのだと。

何度願っても、
何度泣いても、
どうにもならないのだと。

あの頃の私は知らなかった。

人は、
好きだからこそ動けなくなることがあることを。

大切だからこそ、
簡単な言葉にできなくなることがあることを。

そして――

何も言わないことが、
残された相手には「何も思っていない」としか伝わらないことを。

もし、あのとき。

「まだ気持ちはある」

「どうしたらいいのかわからない」

「今すぐ答えは出せないけど、終わらせたいわけじゃない」

たったそれだけでも、
言ってくれていたら。

まとまっていなくてもよかった。

矛盾していてもよかった。

途中経過でもよかった。

私はきっと、
待てた。

ずっとじゃなくてもいい。

少しだけでも。

あなたが何を考えているのか、
何に苦しんでいるのか、
知ることができていたら。

私は、
自分で勝手に終わりを決めなくて済んだのかもしれない。

でも――

もう、戻れない。

あの頃の私には戻れない。

あの時間にも戻れない。

言えなかった言葉も、
聞けなかった言葉も、
もう一度やり直すことはできない。

だから今も思う。

叶わない願いなのだと。

もう少しだけ、
待ってあげればよかった。

もう少しだけ、
信じてあげればよかった。

でも同時に思う。

あなたも、
言ってくれればよかったのに。

ちゃんと伝えてくれればよかった。

私は、
あなたの心を読めるわけじゃない。

何も言われなければ、
何もわからない。

愛しているのか。

迷っているのか。

苦しんでいるのか。

それとも、
もう終わらせたいのか。

私はただ、
あなたの言葉を待っていた。

だから今なら、
あの頃の私にも、
あなたにも言いたい。

完璧な答えじゃなくていい。

きれいに整理された気持ちじゃなくていい。

途中でもいい。

矛盾していてもいい。

「わからない」と言ってくれるだけでもよかった。

だって――

言ってくれなきゃ、
わからないよ。

あの頃の私は、
あなたを忘れたかったんじゃない。

ただ、
どうしたらいいのかわからなかっただけなんだ。

だから泣いていた。

だから絶望していた。

そして今でも、
あの頃の自分を見ると胸が痛む。

もし時間を戻せるのなら。

泣き疲れて眠るしかなかったあの私の隣に座って、

「大丈夫」

と伝えてあげたい。

「まだ何も決まってないよ」

「だから、もう少しだけ待ってあげて」

そう言ってあげたい。

でも――

その言葉を、
あの頃の私に届けることはできない。

もう、遅い。

戻れない。

だからせめて今は、

あの頃の私が知らなかったことを、
ここから先の私だけは知っていたい。

人の気持ちは、
言葉にされなければ届かない。

愛していても、
失いたくなくても、
後悔していても。

言わなければ、
相手には届かない。

そして――

言えなかった言葉ほど、
時間が経ってから、
ずっと心に残るのだと思う。
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