初恋の続きはトキメキとともに。
「違うんです。あれは……私が勝手に落ち込んでて。慰められてただけというか」

「慰められてただけ?」 

「はい。本当に、何も、なかったんです! 心変わりなんてしてません……!」

「じゃあ聞かせて。落ち込んでたって何に?」

「それは……」

私が口籠ると、洸くんはふっと視線を下ろし、小さく息を吐いた。

「顔を見れば分かるよ。遥香は嘘を吐いてないって。だから俺も信じたいって思ってる。でも――」

そう言って一度言葉を切った洸くんは、どこか弱々しさを滲ませた表情で私を見つめた。

そして心の内を吐露するように口を開く。

「……俺、ずっと感じてたんだ。遥香がどこか距離を取ろうとしてるのを。深入りするのを拒むし、一緒にいても、心のどこかで“離れる準備”をしてるみたいに感じてた。付き合ってるのに、まるで一方的に俺が遥香に片想いしてる気分だった」

「そんなこと――……」

「違うなら教えて欲しい。……俺のこと、本気じゃなかった? 別れたいって思ってる?」

洸くんからの思いがけない言葉に、胸が詰まった。

真剣な眼差しで見つめられ、喉が震える。

 ……私、洸くんにそんなふうに思わせてたんだ……。

不安に怯え、別れに備えていた私の態度が、大好きな人を不安にさせていた事実を今初めて知り、ひどく胸が痛んだ。

目の奥が熱くなり、自然と言葉が溢れ出す。

「違うんです……! むしろ逆で、本気だからこそ、私は洸くんにはふさわしくないって思ってて……!」

私の台詞に洸くんが不可解そうに眉を寄せるのが視界に映った。

このままじゃ何も伝わらない。

高校時代を知られたくない一心でずっと隠してきたけれど、もうそんなこと言っていられない。

大好きな人を苦しませることに比べたら些細なことだ。

あれほど頑なに隠してきたのに、この瞬間、自然とそう思った。

私は一度深く息を吸う。

そして意を決して口を開いた。

「……私、ずっと洸くんに隠していたことがあるんです」

「隠してたこと?」

「……高校の時、“広瀬先輩”のことが好きでした。私の初恋で、憧れの人で、ずっと一方的に片想いしてたんです」

突然の私の告白に、空気が静止した。

「え……?」

戸惑ったように洸くんの瞳が揺れる。
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