初恋の続きはトキメキとともに。
その場に沈黙が訪れる中、私はさっと腕時計に視線を落とした。

現在の時刻は午前9時半。

この時間ならもう商品部の社員も出社しているだろうし、連絡がつくはず。

状況を説明して、急遽追加でサンプルの発注を相談することも可能だ。

商品部は手配をするだけで、サンプル自体は確か工場で作られているはずだから、そちらまで取りに行けばいい。

展示会スタートまでは残り30分だけど、途中まで持つくらいの数はあるわけだし、なんとかなるだろう。

 ……うん、大丈夫。たぶん、これでいけるはず!

私は素早く頭の中で段取りをシミュレーションすると、ぱっと顔を上げて、真剣な目で広瀬主任を見た。

「広瀬主任、私、今から商品部に追加の発注を相談した上で、サンプルを工場まで取りに行ってきます。外出の許可をいただけますか?」

「えっ、遥香さん!? それならわたしが行きますよ! わたしのミスなんですから……!」

「ううん、高梨さんは展示会会場にいてくれた方がいいと思うの。昨年の状況を知っていて私より的確に対応できるはずだから。商品部との調整や工場への訪問なら私も総務の時に何度も経験してるしね。……適材適所を考えるとこの配役が一番いいと思うんですけど、どうでしょうか?」

動転する高梨さんに説明しながら、最後は判断を委ねるように私は広瀬主任に視線を向けた。

「――分かった。足りない分のサンプルの手配は南雲さんに任せる。お願いできる?」

「はい……! では、さっそく行ってきます!」

広瀬主任に頼られるとなれば、俄然やる気が出る。

私は控え室に戻ってまず商品部へ連絡を入れた後、荷物を手に外へ駆け出した。


◇◇◇


展示会会場を飛び出してから約4時間後。

午後1時半を過ぎた頃に、私は新商品サンプルの入った段ボールとともに再び控え室に戻ってきていた。

朝ここを出てから、まずは商品部のいる本社へ立ち寄り、発注に必要な書類関係の処理をして、その後に工場へと向かった。
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