初恋の続きはトキメキとともに。
恋人になったからか、休日だからか、理由は定かではないけれど、今日の広瀬主任はいちいち言葉が甘い。

七里ヶ浜に到着するまでに、糖分過多で殺されてしまいそうだ。

 ……か、彼氏モードの広瀬先輩が想像以上で、もうどうにかなりそう……! 私、今日一日もつ!?

「それで、遥香は呼んでくれないの? 俺の名前」

「えっと、名前って……こ、洸平さん、とかですか?」

「遥香と俺って2歳しか歳変わらないんだし、もっと気軽に呼んでくれていいよ。呼び捨とかさ?」

そう提案されたが、私は心の中で「呼び捨ては絶対無理!」と即座に悲鳴を上げた。

私にとって広瀬主任は憧れの人だから、呼び捨てするには心理的ハードルが高すぎる。

「洸平さん」と口にしただけでも、実はかなりの精神力を要しているのだ。


「……ちなみに、呼び捨て以外だと、プライベートでは周囲になんて呼ばれることが多いんですか?」

「コーヘイ、コウ、洸くん……大体このどれかで呼ばれてるかな」

「じゃあ……洸くん、って呼ばせてもらいます」

結局私は、選択肢の中から、口にするのに一番抵抗感がマシな呼び方を選んだ。

ただし、マシというだけで、ないわけではない。

 ……私なんかがあの広瀬先輩を『洸くん』って呼ばせてもらうなんて、恐れ多いよ……! 高校時代の私が知れば卒倒しそう。

でも、気軽に呼んで欲しいと、他ならぬ広瀬主任からのリクエストなのだ。

「洸くん、洸くん、洸くん……」と私は心の中で何度もつぶやき、必死に慣れようと頑張った。

そんな様子を、広瀬主任が運転席から愛おしそうに見つめていたなんて、私はまったく気づいていなかった。
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