初恋の続きはトキメキとともに。
「ふふっ……なに? 俺の顔になにか付いてる?」

「えっ」

こっそり見ていたものの、初めて目にする貴重な姿を胸に刻み込もうとしていたら、つい視線が熱くなってしまっていたようだ。

広瀬主任にあっさりバレてバツが悪い。

「いえ、あの、その……休日モードの広瀬主任の姿が珍しくて、つい見入ってしまって。お気を悪くされたならすみません」

「気を悪くしたりなんてしないよ。自分の彼女から熱く見つめられたら嬉しいし?」

「か、か、かの……じょ」

「違うの? 一昨日俺が告白して付き合うことになったと思ってたんだけど」

「ち、違わなく、ないです……! ただ、その、まだ慣れなくて」

「そっか、良かった。『やっぱりなかったことにしてください』とか、『あれは間違いでした』とか言われたらどうしようかと思った。……まぁもし言われても、もう一回告白して絶対頷かせるけどね」

『広瀬主任の彼女』という立場にいまだ現実感がなく私が狼狽えていると、広瀬主任はさらに私を動揺させる台詞を紡ぐ。

まるで「広瀬主任の方が私を求めている」と聞こえる言葉を向けられ、私は目を瞬いた。


「ところでさ、2人の時は名前の呼び方を変えない? 仕事の時と違えば、付き合ってるって実感も湧くしだろうし。どう、遥香?」

「!」

不意打ちで名前を呼ばれ、あやうく心臓が爆発するところだった。

いまだかつて、名前を呼ばれただけで、これほどドキドキしたことがあっただろうか。

いや、ない。

茉侑を含め私のことを「遥香」と呼ぶ人は何人かいるけれど、こんなに胸がぎゅっと締め付けられはしなかった。

名前を呼ばれるだけで嬉しくって、ムズムズして、広瀬主任の優しい声で何度も呼んで欲しくなる。

「……遥香、そんな可愛い顔しないでよ。運転中だからじっくり見れなくて困る」

「えっ!? あ、あの、広瀬主任、あんまりからかわないでください……!」

「からかってないよ。全部ただの本心」
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