初恋の続きはトキメキとともに。
広瀬主任が意識的にそうしているわけではないのだろうけど、そこにいるだけで、自然と周囲を魅了してしまうのだ。

だから高校でも、会社でも、広瀬主任は常に人の中心にいる。

そんな人の隣にいるのが私で良いのだろうかと心の奥底から不安がひょっこり顔を出す。

あの子じゃ不釣り合い、と周囲にヒソヒソ言われている気がして肩身が狭く落ち着かない。

「遥香、急に静かになったけど、どうかした?」

「……えっ? あ、そうですか?」
 
「さっきまで海を見て目をキラキラさせてたのに、料理が来た辺りから口数少なくなったから気になって。食事が口に合わなかった?」

「いえいえ! すごく美味しいです! ……その、美味しすぎて、思わず食べるのに集中しちゃってました……!」

咄嗟に思いついた言い訳を口にして、私は無理やり平然を取り繕う。

周囲の視線が気になっていたなんて、広瀬主任には言いづらい。

「へぇ、そんなに美味しいんだ。俺にも一口食べさせて欲しいな」

「あ、はい。良かったらどうぞ」

私が慌ててお皿を持ち上げようとしたら、それより速く隣に座る広瀬主任からやんわり手で制された。

「遥香が俺に食べさせて」

「えっ……」

思わぬ一言に私は目を丸くする。

 ……そ、それは、いわゆる「あーんする」というヤツ? え、私がするの!? 広瀬先輩に!?

突然驚きのリクエストを受け、どうするべきか悩み、私の頭は大混乱に陥った。

固まったまま、視線だけが目の前のお皿と広瀬主任の顔の間を行ったり来たりする。

「ふふっ、ごめんごめん。今のは冗談」

「じょ、冗談……!?」

思考回路のショート寸前まで真剣に頭を悩ませ、リクエストに答えた方がいいのかな……と覚悟を決め始めていたタイミングで、なんと広瀬主任は小さく笑ってあっさり発言を翻した。

間に受けて動揺した私がバカみたいで、つい広瀬主任相手にもの言いたげな目になってしまう。
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