幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家

「な、なにそれ。全然知らない……」
「私だけじゃなくて、医学部の他の女子たちにも頼んでた。ちなみに男子のことはめっちゃわかりやすく威嚇してたよ。『雪村美葉に手を出したら、医者じゃなく患者として病院に行くことになる』――って。並の男がそんなこと言ったって大して効果はないかもしれないけど、洸くんほどの美形に淡々と詰められたら怖いよね」

 紀佳はくすくすと笑っているけれど、私には身に覚えのない話ばかりでうまく吞み込めない。

 黙り込んでただ瞬きを繰り返していると、紀佳がテーブルに頬杖をついてにんまり笑みを深める。

「私は違うけど、中には『あんなイケメンに一途に想われてずるい』って、美葉をやっかむ子もいたんだよね。でも、それが逆に功を奏して〝他の男は私たちに譲ってもらわなきゃ〟って団結して、美葉に変な虫がつかないようにするのに協力的だった。結局、洸くんの思惑通り美葉の身は守られたってわけよ」
「……そうだったんだ」

 別にそんなことしなくても私に興味を持つ男性なんて対していなかったと思うけど、彼のその過保護さをうれしく思う自分がいた。

 学生時代の洸がどうして『まだ迎えに行けない』と判断したのかはわからないけれど、その間も一途に想われていたんだと思うと、胸が高鳴る。

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