幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
「そのネタばらし、当時してほしかった……」
洸が額に手を当てて、がっくりうなだれる。
「ゴ、ゴメン。洸にとっては絶望するほどショックだったんだよね。どうやってお詫びしたらいいんだろう。ホントにゴメンなさい」
「いや、ある意味よかったんだと思うよ。あのタイミングで美葉に突き放してもらえて」
そう話しながら、洸の目は水槽の中のある魚を追っていた。その魚を指差しながら、私の方を振り向く。
「それまでの俺って、アレみたいだったじゃん。いつでも美葉にくっついてさ」
彼が示した先で泳いでいたのは、水槽の中を羽ばたくように泳いでいる巨大なマンタ。
しかし、彼が見せたいのはマンタそのものではなく、真っ白な腹部にくっついて泳いでいる小さな魚の方だろう。
「もしかして、コバンザメのこと?」
「そう。あれって、くっつかれているマンタの方にも別に損はないけど、得はコバンザメの方にしかないらしいよ。一方的に美葉にくっついて幸せもらってた、昔の俺と似てない?」
「なんかそういうの、理科で習った気がする。片利共生って言うんだっけ?」
「それだ。よく覚えてるな。さすが美葉」
確かに、高校までの洸はよく私と一緒にいた。帰る場所も同じマンションだから、たとえクラスが違っても、登校や下校はほとんど毎日ふたりきり。
……でも、コバンザメに例えるのは少し違う気がする。