幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
「私、洸からなにももらってなかったわけじゃないよ」
「え?」
「安心とか、優しさとか……目に見えなくても温かいもの。昔からたくさんもらってる」
「美葉……」
洸の目が、感極まったように潤んで私を見つめた。そんな反応をされると照れてしまう。
「今こそ俺、コバンザメになりたい気分」
洸が噛みしめるように呟くと同時に、手を握る力がギュッと強くなった。
「どういう意味?」
「美葉を抱きしめたいってこと」
臆面もなく甘い言葉を吐かれ、ぶわっと頬に熱がのぼる。
さっき『我慢はやめた』と言っていたのって、もしかしてこういう恥ずかしい発言もこれからはどんどんしていくってこと……?
「こ、ここでは無理でしょう……。さ、次の水槽行くよ」
「あ、話そらした」
不服そうにしながらも、洸は大人しく私についてくる。そして色々な海の生き物を見ながら、私の知らなかった過去の話をゆっくり聞かせてくれた。
紀佳から聞いた話もほぼ事実で、大学卒業後、高比良総合病院で実務経験を積むように勧めてきたのも、私を自分のテリトリーに囲い込んでおきたかったからだそうだ。