幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家

「小森の家、母ひとり子ひとりの母子家庭らしいんです。で、小森が看護師になるために一生懸命働いてくれた母親のために、小森は恩返しをしたいと思っていて」
「親孝行ってわけか。それで?」
「洸先生は、この病院の後継ぎなわけじゃないですか。医者としての腕も確かで、ルックスも抜群。だから、恋愛感情として洸先生が好きというより、この人なら母親を喜ばせられるって気持ちで動いてるんです。前に一緒に酒飲んだ時、酔った小森が言ってたので嘘じゃないと思います」

 酔っている時に出る言葉は本音――。竜崎先生もそう思っているのだろう。

「なるほど。〝応援しない〟っていうのはそういうことだったのか」
「俺が幸せにする、くらい言えたらカッコいいんですけどね……まだ専攻医ですし」

 彼の気持ちに大きく共感する。美葉を迎えに行く自信がつくまでには、俺もずいぶん長い時間回り道をしたから

「修行中の身はつらいよな。でも、いつか竜崎先生の気持ちが彼女に届くって信じてるよ」
「……ありがとうございます」

 恐縮して頭を下げる竜崎先生の背中をポンと叩き、俺はその場を後にする。優しく思いやりのある彼は、きっと将来いい麻酔科医になることだろう。

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