幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
幼なじみドクターからの求婚
病院の職員食堂はいつも噂話に満ちている。
三月も終わりに近づいてきた今日は、来週に迫る新年度から、ここ『高比良総合病院』にやってくる心臓血管外科医の話で持ち切りだった。
「院長には医者の息子がふたりいて、次男の方が来るんでしょ?」
「帝応大きっての異端児って噂よ。どこの医局にも属さず、本人も居心地が悪くなって結局実家の病院に逃げて来るとか」
「異端児でもいいけど、看護師には優しい先生ならいいな~」
ひとりで食事をする私のそばで、手術室看護師――いわゆるオペナースのグループが、まさにその話題で盛り上がっていた。
私は午後のオペに備えてもりもりと唐揚げ定食を食べながら、内心悶々とする。
彼――高比良洸が院長の次男であり、現在帝応大学付属病院に勤務しているという情報は正しい。でも、彼がまるで自分勝手なはみ出し者のように言われるのはいい気がしない。
洸はきっと、自分の出世よりも患者さんが大切だっただけだ。それにこの病院に来る理由だって、決して大学病院のしがらみから逃げたいわけじゃない。
父親の病院を継ぐことは、幼い頃からの彼の夢。
それを叶えるために、まずは最新の医療を学ぶことができる大学病院に勤務し、着々と経験を積んでいたのだ。