幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家

 といっても、本人からその話を聞いたのは何年も前の話。

 先週末、一緒に高校時代の友人の結婚式に参列した時もずいぶんと久々の再会だった。

 見た目も中身もすっかり大人になってしまった洸だけれど、そばにいるだけで心地いい空気感はそのまま。

 だから実家のマンションへ帰る道すがら、昔よく一緒に遊んだ公園に立ち寄って、あんなふうに愚痴ってしまったのだ。

『じゃあ、俺とする? 結婚』

 ……あの発言はなんだったんだろう。

 きつね色のから揚げを箸で掴んだまま、口には運ばずにぼんやり思いを巡らせる。

 テンパって返事ができないまま結局はぐらかしてしまったけれど……実家の玄関の前まで送ってくれた洸が、別れる直前に言っていた。

『俺、四月にようやくそっちの病院行けるから。その時にまた話そう』
『う、うん……。おやすみ』

 あの時の『話そう』っていうのは、結婚のことについて? それとも、単に幼なじみとして気軽に会話しようって意味?

 洸の眼差しが真剣だったせいか、思い出しただけで軽くどぎまぎしてしまう。

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