私の理想の王子様
プロローグ 理想の王子様なんていない
「はぁ、やっぱり理想の王子様だなぁ」
田野倉朝子はそうつぶやくと、スマートフォンの画面から目線を上げる。
満たされた心を存分に味わうように深く息をすると、列の前の人に続いて電車に乗り込んだ。
この駅が始発の各駅停車は、まだ人もまばらで空席が目立ち閑散としている。
朝子は左端のお気に入りの席に深く腰を下ろすと、風で乱れたダークブラウンのショートヘアを手櫛でささっと整えた。
チラッと辺りを見渡すと、いつもの顔ぶれは定位置に座っている。
それぞれが新聞を広げたり、イヤホンを耳にあてる中、朝子は再びスマートフォンを取り出すといそいそと画面をタップした。
しばらくして起動したのは、お気に入りの漫画アプリだ。
(さぁ、いよいよ二人の恋は山場なんだよね)
朝子は待ちきれない様子で指を動かすと、毎日一話更新されるお気に入りの少女漫画のページを開く。
いつの間にか発車していた電車の心地よい揺れを身体に感じながら、朝子はヒーローの笑顔に深くため息をついた。
漫画の世界のヒーローは、いつだってヒロインを大切にして、溢れる愛で包み込んでくれる。
田野倉朝子はそうつぶやくと、スマートフォンの画面から目線を上げる。
満たされた心を存分に味わうように深く息をすると、列の前の人に続いて電車に乗り込んだ。
この駅が始発の各駅停車は、まだ人もまばらで空席が目立ち閑散としている。
朝子は左端のお気に入りの席に深く腰を下ろすと、風で乱れたダークブラウンのショートヘアを手櫛でささっと整えた。
チラッと辺りを見渡すと、いつもの顔ぶれは定位置に座っている。
それぞれが新聞を広げたり、イヤホンを耳にあてる中、朝子は再びスマートフォンを取り出すといそいそと画面をタップした。
しばらくして起動したのは、お気に入りの漫画アプリだ。
(さぁ、いよいよ二人の恋は山場なんだよね)
朝子は待ちきれない様子で指を動かすと、毎日一話更新されるお気に入りの少女漫画のページを開く。
いつの間にか発車していた電車の心地よい揺れを身体に感じながら、朝子はヒーローの笑顔に深くため息をついた。
漫画の世界のヒーローは、いつだってヒロインを大切にして、溢れる愛で包み込んでくれる。
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