私の理想の王子様
「わかった、朝子ちゃん。辛いけど、最初の出番だけは乗り切って。その後は私たちがなんとかする。朝子ちゃんは、空港に行きなさい」

「え……」

「大丈夫、私たちを信じて。私たちは同じチームの仲間でしょう?」

 由美の言葉に朝子ははっと顔を上げる。

「そうだよ、田野倉さん。私たちはそのためのチームじゃない」

 すると間宮も朝子の前にぐっと顔を寄せた。

「由美さん、間宮さん……本当にありがとうございます」

 泣きながら頭を下げる朝子に、由美と間宮が朝子を抱きしめるように腕を伸ばす。

 二人の温もりは朝子の冷たく冷え切った心を少しずつ溶かしていった。


「さぁ、そうと決まればまずはメイクよ」

 メイク道具を広げる由美に、朝子は眉を下げた顔を上げる。

「でも、私こんなに顔が腫れてしまって」

 すると由美の隣に立つ間宮が、あははと楽しそうに笑い声をあげた。

「私を誰だと思ってるの? 仮にも現ボウ・ボーテのトップBAですからね」

「そうそう! 間宮さんにかかれば、メイクは魔法だってわかるってもんよ」

 きゃあきゃあと騒ぐ二人の声に、朝子の心は少しずつ落ち着いていく。

 こんな素敵なメンバーに支えられて、自分は成り立っているのだと心から実感した。


(今はとにかくプレスリリースを成功させるんだ)

 朝子は顔を上げると、自分を見つめる須藤の笑顔を思い浮かべながら気持ちを引き締めたのだ。
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