私の理想の王子様
 それでも、仲間たちの支えがあって朝子は今ここに立っている。

(みんなのためにも、私はここで立派に朝哉としての役割を全うするんだ)

 朝子は皆に力強くうなずくと、今自分に出せる精一杯の力を振り絞ってステージを終えたのだ。


「朝子ちゃん、よくやったよ!」

「下にタクシーを待たせてあるから。もう、今すぐに空港に向かって!」

 控室に戻った朝子は、手に持っていた資料と引き換えに鞄を受け取るとポンポンと肩を押される。

 今ステージ上では、間宮が実物の化粧品を使ってデモンストレーションを始めた頃だろう。

「由美さん……本当にありがとうございます」

 朝子は深々と頭を下げながら、涙を溢れさせる。

 そんな朝子の顔に、由美もつられるように瞳を潤ませると、朝子の肩をぐっと押した。

「今ならまだ間に合うから。とにかく後悔だけはしないようにね」

 半ば叫ぶような由美の声に、朝子は「はい!」と大きく返事をすると、脇目も振らずにエレベーターへと向かって駆けだしたのだ。
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