私の理想の王子様

揺れる心

 バーベキューの日からしばらく経ち、季節はもう冬の始まりを迎えていた。

 朝子はランチ休憩で入ったカフェで、窓際のひとり席に腰かける。

 ふと窓の外を見ると、目の前の街路樹が風に揺すられ、ひらひらと葉を散らしていた。

 もうだいぶ深みを増してきた赤や黄に染まる葉を見ながら、朝子の瞼の裏にあの日の須藤の顔が映る。

 あのキス寸前の出来事以来、ふとした時に朝子の脳裏には、須藤の顔が浮かぶのだ。


「別に、気になるとかじゃないし」

 朝子は運ばれてきたパスタを口元に運ぶと、もぐもぐと大きく口を動かしながら、そう自分に言い聞かせる。

 そもそも須藤は朝哉のことを同性だと理解した上で、あの行動にでたのだ。

 気にしたところで、相手は本当の朝子を見ているわけではないだろう。

(須藤さんは、朝哉だから興味があるって言ったわけだし)

 でもそう思いながらも、どこか胸がチクチクと痛む自分がいることを感じる。

(もしかして私……)

 朝子は静かに顔を上げる。

(須藤さんには、本当の自分を見て欲しいって思ってる……?)

 そう思った途端、全身がカッと熱くなる感じがしてきた。この気持ちは何だろう。

 これは理想の王子様になって得られた高揚感とは全く別のもの?
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