私の理想の王子様
 すると、朝子が自分の気持ちに戸惑いを感じだした時、誰かが肩をツンツンとつついた。

 ビクッとして振り返ると、隣に立っているのは智乃だ。

「朝子さん、隣いいですか?」

 智乃は可愛らしく、くりくりの瞳を覗き込ませている。

「もちろん。智乃ちゃんも今休憩だったんだ」

「はい。今日は少し遅くなっちゃって」

 智乃は肩をすくませると朝子の隣に腰かけた。


 朝子と同じパスタランチを注文した智乃と、しばらくは二人で社内の話をしていたが、ふと智乃が口を閉ざすと朝子の前に顔を覗き込ませた。

「朝子さん、何か悩み事ですか?」

 智乃の鋭い質問にドキッとする。

 前にも思ったが、智乃は時々朝子でも驚くほどの観察眼を発揮する。

「わかる?」

 朝子が声を潜めると、智乃は「やっぱり!」と身を乗り出した。

「さっき見かけた時、いつもと顔つきが違うなぁって思ったんですよねぇ。で、どうしたんですか? もしかして前に話してた理想の王子様のこととか?」

 智乃はずずいと朝子に身体を寄せる。

 朝子は智乃の勢いにタジタジになりながらも「その……」と声を出した。
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